ステンドグラスの基本でもある、コパーホイルでの制作行程です。
【工程1.デザインができたら、まず型紙を制作しよう!】
まず始めに、型紙を準備します。型紙は、ガラス切り用と、ハンダ付け用の2つ用意して下さい。
ガラス切り用の型紙を切っていきます。
ガラスの間は、コパーホイル(銅のテープ)の厚み分あけておかなくてはいけないので、1mmあけて切ります。
この時、2枚刃のカッターを使います。片側しか切れていない場合がありますので、両方の刃に力を均等に加えて下さい。
☆ここで使った工具は。。。
パターンナイフ
型紙を切る時に使用します。二枚刃になっていて、アタッチメント付きなので、小物の時は1mm、パネルの時は1.5mm または2.0mmの隙間を開けて切る事ができます。
このように、1mmの分だけ抜いていきます。
型紙には、番号をふっておきましょう。この作品は、パーツ数が少ないので、番号だけでも良いのですが、もっと複雑なデザインの時は、色も塗っておくとガラスに書き写す時に楽です。
ガラスの流れがあるものを使う場合は、この段階で型紙に流れを描いておきましょう。
全て切り終わったら、並べてみましょう。
なくなっているパーツはないか確認して下さい。
【工程2.イメージに合わせてガラスを選ぼう!】
いよいよ、ガラスを選びます。
ガラスは種類だけでも、何百もあるので、自分のイメージにあった、色・質感のものを選びましょう。
この行程は、とても重要です。組み合わせによっては、イメージが変わってしまいます。
板ガラスから、完成のイメージをして選ぶのは、初めは大変かもしれませんが、とても楽しい行程です。
ガラス選びが終わったら、油性マジックで型紙を書き写していきます。
油性マジックで書いたら、消えないのではないか?と思われるでしょうが、簡単に取れるので安心して下さい。
工房によっては、薄い紙で型紙を作って、ガラスにのりで貼っているところもあります。1個だけ作るのであれば、それでも良いのですが、何個もつくる場合、型紙を使いまわしたいので、私は画用紙などの厚手のものを使って、何回も使用しています。
流れのあるガラスを使う場合は、型紙に描いた線を目安に向きを揃えます。
【工程3.ガラス切りの基本、まずは直線から!】
ガラスを切る時には、カッティングオイルをカッターの中に入れます。
それとは別に、小さな容器にオイルを入れて、刃先を付けながら切ります。
刃の滑りをよくするためと、切ったスコアにオイルが入り込んで、割り取りやすくなります。
直線用のオイルカッターの持ち方です。
鉛筆を持つように持ったら、中指でカッターの頭を安定させます。
ガラス切り用の定規を、書いた線に合わせます。この時、カッターの刃が線の上にくるように合わせて下さい。
カッターの刃は厚みがあり、その中心にダイヤモンド刃がついてますので
切り始めと切り終わりで、しっかりと定規の位置を合わせます。
切る時は、中指で定規にカッターの頭をくっつけながら手前に引きます。この時、4つ力のかける場所があります。
1.定規とカッターの頭を固定させる力
(中指で)
2.手前にカッターを引く力
3.下にカッターを押し付ける力
4.定規が動かないように固定させる力
普通のカッターで紙を切る時と同じ要領です。ガラスが切れている時は「チ-」という音がします。音がしない時は、切れていない可能性があります。(ガラスの種類によっては、音のしないものもあります。)
「ガラスを切る」といっても、紙の様に、切ったらすぐに切り離されるものではありません。
ガラスは、「傷をつけて、割り取る」と言った感じです。
割り取る時は、先程切った箇所の両はじを掴みます。
そして、せんべいを割る感じで割り取って下さい。
この時、横に引っ張るような感じで割るとうまくいきます。
切った端から、割れる線が伸びて行くイメージで割り取ってください。
切った長さの真中あたりを持っても、力が分散されて上手く割り取れません。
長い直線の場合は、途中まで割りを入れて、途中に持ち替えて割り取る場合もあります。
☆ここで使った工具は。。。
オイルカッターTC-30(直線用)
ガラスを切る道具です。直線用は刃の部分が大きく、定規をあてて手前に引きながら切ります。
裏にゴムがついていて、ガラスの上で滑らないようになっています。
【工程4.曲線を切るときのポイント!】
曲線は、カッターの頭が小さいものを使います。曲線は押しながら切ります。(人によっては、引きながら切る人もいます。)
鉛筆を持つようにして、カッターを持って下さい。この時、左手でカッターの上をにぎります。
この時の力のかけ方は、
左手:下と前に押す力
右手:線の上をなぞるために、左手で押す力をコントロールします。
そのため、左手は前への力に対して、右手はそれを抑えるため、後ろへ引っ張る力がかかります。右手のコントロールをうまくできないと、線とは関係ないところを切ってしまいます。
※曲線もカッティングオイルを入れるのを忘れずに。
曲線を切る時は、このように2回くらいに分けて切りましょう。
ガラスは、まっすぐに割れようとするので、一回で切ろうとすると、カッターで切ったのとは全然ちがう方向に割れてしまったり、欠けてしまうことがあります。
次は、えぐれた部分の切り方です。
小さい部分のガラスは、手でつかめないので、ガラスプライヤーというものを使います。
まず、一回切ります。
そして、もう一回切ります。
このように、2回に分けて切らないと尖った部分が欠けてしまったりします。
もっと、えぐれのきついものは5~6回に分けて切る事もあります。
ここで、面倒だからと、手を抜くとガラスが割れてしまい、また型紙を書き写すところから、やり直しになってしまいます。
☆ここで使った工具は。。。
曲線用は刃の部分が小さく、フリーハンドで手前から押しながら切ります。(工房によって引いて切る場合もあります)
ガラスを切って割り取る時にガラスをはさむものです。
いろいろなタイプのものがありますが、このタイプのものを使う時は、ガラスを掴む部分は、金ヤスリで少し削ったほうがつかみやすいです。
これは、ガラスをガリガリ削る事もできるので便利ですが
初心者の方は、掴む部分の面積の多いワニ口(わにくち)をお勧めします。
【工程5.ルーターでガラスを削ろう!】
ガラスを切り終わったら、ガラスを削ります。
まわりの尖った部分を平らにしたり、型紙に合わせながら、正確な形にしていきます。
削る時は、写真のように左手を添えるようにしましょう。手を添えていないと、細いガラスは折れてしまう場合があります。
ガラスを押す力は、加減しないと、ガラスの切り口で手を切ってしまう事がありますので、気をつけましょう。
45度に傾けて、両面、面取りもします。
面取りをしておくと、ハンダを縁に盛る時にきれいにのせる事ができます。
(ケイムパネルの場合は面取りは不要です。リップルなど厚みのあるガラスの時だけ斜めに削って、ケイムに入るようにします。)
☆ここで使った工具は。。。
小さめのルーターもあります。
【工程6.ハンダのことを考えながらテープ巻き!】
ガラスを切り終わったら、『コパーホイル』という銅のテープを巻いていきます。この上にハンダをのせていくので、テープは、均等な幅になるように巻いて下さい。
出過ぎていたり、直線の部分なのに波打って巻いてしまうと、せっかくきれいにガラスを切っても、意味がなくなってしまいます。テープの裏は粘着になっているので、粘着部分を上にむけて、その上にガラスをのせるようにして巻いていきましょう。
巻き終わりは5mmくらい重ねて下さい。手で簡単に切る事ができます。
今回は5.5mm幅の物を使っています。
コパーテープの幅は色々ありますが、細い線で繊細さも出す事ができます。
しかし、強度的には弱くなるので、その辺も考慮して選びましょう。
まわりを巻いたら、ヘラを使ってテープを倒していきます。
テープ巻き用のヘラも売っていますが、固すぎない木であれば問題ありません。私は、割り箸を使っています。
ガラスにしっかり付くように、こすって下さい。付きがあまいと、ハンダ付けの時に、コテの熱でテープが浮いてきてしまう事があります。
曲線部分を巻く時の、きれいに倒すためのコツは、ちょっとずつ倒していく事です。
直線の時も2回くらいにわけて倒した方が、テープに切れ目が入ってしまう事もありません。切れ目が入ってしまうと、その部分にハンダがのらないので、小さな裂け目ができたら、巻き直した方が良いです。
☆ここで使った工具は。。。
裏が粘着になっている銅のテープです。ハンダ付けの作業の前にガラスに巻きます。
【工程7.シワに気をつけてハンダ付け!】
テープを巻き終わったら、型紙の上に並べていきましょう。型紙とガラスに番号をふっておくと、並べる時に楽です。
ガラスの裏・表を間違えないよう、最終確認をして下さい。
ガラスがずれないように、周りに木を打ち付けましょう。
銅テープの部分に、フラックスを塗ります。
この時、フラックスの量が多いと、ハンダがはねて顔などに飛びますので、気をつけて下さい。メガネ(ダテメガネ)をかけて作業しましょう。目に入る場合があります。
ハンダを盛っていきます。コテは高温になりますので、軍手をはいて下さい。
盛りぐあいは、人によって様々です。できるだけ均等な量をのせて下さい。シワなども無い様にしていきましょう。
あまり夢中になって、いじりすぎるとテープが熱で浮いてきてしまうので、気をつけましょう。
まわりの縁を盛る時は、パネルを立てて、盛る部分が床と平行になるようにして下さい。
ハンダは熱で液体にちかくなっているので、斜めになっているときれいにハンダが付きません。少しずつのせていって下さい。
コテ先でハンダをすくい取りながら、乗せていきます。
☆ここで使った工具は。。。
ハンダ付けの作業の時にハンダをのせる前にコパーホイルの部分につけます。
Bはコパー用、Aはケイム用、などと種類が分かれています。
両方兼用のフラックスHがお勧めです。
フラックスをぬる時に使用します。水彩画用などの筆を使うと、毛の部分がぬけ落ちたりしますので、この筆を使った方が良いです。
100wや80wがあります。コパーは80wで充分ですが、ケイムなどは100wの方がいいので、100wでコントローラーで調整すると良いと思います。
ハンダゴテを置く台です。横にスポンジがついていて、そこに水を入れコテ先の汚れを取ります。
ハンダゴテの温度調節に使います。可変範囲は50%~100%です。
コテは放っておくと、どんどん熱が上がりますので、コントローラーはあった方がよいです。
【工程8.ブラックパティーナで色付けしよう!】
ハンダ付けが終わったら、『ブラックパティーナ』という薬品でハンダの部分を黒くしていきます。
筆で、塗残しがないように気をつけながら染めていきましょう。
大きいものになると、筆でちょこちょこ塗るのは大変なので、布にパティーナを染み込ませて塗る場合もあります。
パティーナには『アンティックパティーナ』『カッパーパティーナ』など、銅色に染めれるものもあります。
黒く色をつけたら、みがいていきます。
市販のガラスクリーナーをかけて、柔らかい布で拭きましょう。
1回拭いただけでは綺麗になりません。
何分か置いておきます。そうすると、ガラスがまだくもっていますので、さらにガラスクリーナーをかけて拭きます。
2~3回くり返すと、綺麗になりますので、最後に綺麗な布でから拭きして下さい。そうすると、ピカピカになります。
☆ここで使った工具は。。。
仕上げにハンダの部分に銅色や黒などの色を付ける薬品です。
酸化防止のために、ハンダ部分を、ポリワックスでコーティングすると良いです。
【完成です!】
右上には、立体的にオレンジの花びらがハンダで付いています。
簡単にポロッと取れる事はありません。
この作品は、ウェルカムボードです。
裏に金具で紙を止めれるようになっています。
(2014年4月更新)