ケイム(鉛線)を使ったパネルの制作行程です。
窓などに入れるのであれば、強度もある、この技法のものが最適です。
線もスッキリ見えますので、仕上がりも綺麗です。
【型紙について】
ケイムの場合、ガラスとガラスの間はケイムの芯の厚み分あけます。
今回はRH5を使いましたので、1.5mmあけています。
正確な芯幅は1.2mmですが、少し余裕をみています。
外枠はH型の外側から芯のガラス側までの寸法をあけます。
今回はジンクケイム13FHを使用しましたので、7mmです。
組み立てに入る前に、L字に木枠を打ち付けます。
(ガラスカットなどの説明は省略します)
※ジンクケイムはニッパーでは切れませんので、金ノコかミニカッティングソウでカットします。(丸ノコ刃使用)
ミニカッティングソウ
外枠となるジンクケイムを必要な長さにカットして組み立てスタートです。
【ケイムを伸ばす】
ケイムは柔らかく、曲がってしまっているので、プラヘラなどで
机に押し付けるようにしながら、ケイムの溝に沿って移動させ真っすぐにします。
プラヘラ
【ケイムを切る】
ニッパーの刃とケイムの溝の線が合うようにカットすると、真っすぐに切れます。
レッドナイフでも良いのですが、レッドナイフはまめに刃を研がないと
切れが悪く、ケイムがつぶれてしまうので、私はニッパーを使用してます。
修理等の場合は、レッドナイフで修理箇所を切ると便利ですので
使い分けがいいですね。
このように、合う部分を斜めにカットして合わせます。
先端部分も、ここにケイムがきますので、その幅分カットしておきます。
はじめは、ケイムののみ込み幅が分からないので、ケイムの破材をあてて
えんぴつで印をつけてニッパーでカットします。
慣れてきますと、破材をあてなくても、のみ込み幅分がわかるようになります。
【ガラスの仮止め】
ガラスの仮止めはホースネイルがお勧めです。
ホースネイルはガラスに直接あてて使う事もできますが
ケイム部分で固定したい場合は、釘を直接打ち付けるとケイムがへこみますので
木などをあててください。
ラウンドケイムはコロコロ転がり倒れてしまう事があるので、
真っすぐになるようにしてください。
倒れたままハンダしてしまうと、裏側でガラスの端が出てしまってることが
あります。
ケイムにはラウンドとフラットがあります。
用途は好みによります。
ラウンドケイムは丸みがある分、少し強度がでるのと見た目が綺麗です。
フラットケイムで強度を出したい時は、表面全体にハンダをのせたりもしますが
コテの熱でケイムが溶けてしまう危険性があるので、かなりの技術を必要とします。
ヨーロッパなどの教会のパネルはフラットケイムが多く使用されています。
これは、修復などの際に裏側から割れた部分のケイムを開き
ガラスを取り替える事ができるからです。
そのため、裏側はハンダ付けしていない場合もあります。
デザイン的に長い線はケイムを1本で入れた方が仕上がりが綺麗ですが
ケイムを途中でつなぐ場合は、下の図のようにガラスの途中でつなぐと
見栄えがよくありません。
このように、他の接合点にくるようにしてください。
外側のジンクケイムの部分は、先に現物をあてて線を引いておいて
その線に合わせてケイムをカットすると作業が楽です。
ハンダ付けの前にケイムがずれている部分などは、釘などを使って直します。
デザインでは真っすぐのラインのはずが、出来上がったらカクカクしていると
かっこ悪いです。
ガラスがちょっと小さくて、ケイムがずれてしまう場合や、デザイン的に
ガラスが細くて強度が心配な場合は、補強ストリップをガラスとケイムの間に
入れます。
補強ストリップ
曲線のデザインの場合、ケイムの丸みが強すぎてガラスとの隙間ができて
ずれてくる場合があります。
その場合は、ガラスに木などをあててハンマーで叩いてください。
この時、周りの仮止めをしっかりしていないと、せっかく組んだものが
叩いた反動で崩れる場合がありますのでご注意ください。
【ハンダ付け】
フラックスはケイム用のものを使用してください。
外側の部分は平になるようにハンダします。
ジンクケイムは溶けづらいので、少し安心です。
中側のケイムは、少し長くなるようにハンダした方が強度も出ます。
ケイムは溶けますので、気をつけてください。
コントローラーで熱の調整をしたり、それでもコテの温度は上がりますので
コテ先を水につけて冷やしながら作業すると良いです。
どれくらいで溶けるかは、体感して覚えるしかないので、作品のパネルの
ハンダをする前に余ったケイムで、どれくらいでコテをあてていたら溶けるのか
などを試してくださいね。
ハンダが終わったら、工業用アルコールでフラックスを拭き取ります。
【パテ埋め】
今回使用しているのは、粉とオイルを混ぜる速乾性のパテです。
パテを埋める理由は、ガラスがカタカタしないためと、強度も出ます。
1:粉とオイルを容器に入れてゴムベラで混ぜます。
容器はタッパーなどでかまいません。
耳たぶよりも少し柔らかいくらいが良いです。
あまりオイルが多いと、流れ出てきてしまいます。
2:ゴムコテなどで、ガラスのケイムの間にパテを埋めていきます。
全て終わったら、布きれで余分なところのパテを拭き取っておくと
後の処理がラクです。
3:1〜2日置く
気候などにより乾く早さは変わりますので、時折爪楊枝などで硬さを確認します。
硬くなりすぎると、取るのに苦労しますので、ご注意ください。
4:ポロポロと取れるくらいに固まったら、ケイムからはみ出た部分を
爪楊枝で取ります。
取ったパテは、掃除機で吸い取るとラクです。
掃除機のホース部分にパテが張り付いたり、匂いがしますので
パテ専用の掃除機を用意した方がいいです。
5:パテを取ったら、工業用アルコールで拭き取ります。
6:ケイムに酸化防止の処理をします。
ピカットを使用してもよいです。
私は、車用のワックスをスポンジに含ませてケイムに塗り、
タオル地の布で磨いています。
7:ガラスクリーナーでガラスを磨きます。
ガラスの隅の方も、爪楊枝などを利用して綺麗にします。
ガラスクリーナーの後、乾いた布で乾拭きするとより一層綺麗になります。
磨き残しがあるので、最終チェックは光に透かしながら拭いてください。
拭くのに夢中になって、パネルを倒したり、曲げたりしないでくださいね。
※パテは両面した方がいいです。
これで完成です。
このパネルは、30cm×150cmのパネルです。
ケイムを使えば、大きなパネルの制作が可能になります。
コパーですと、取付けた後で、パネル自身の重みで下の方のガラスが
割れてしまうこともあります。
ケイムですと 2mちょい×60〜80cmまでの大きさまで可能になります。
作業も、どんどん組み上がっていくのが、とても爽快で楽しいですよ。
(2014年7月更新)